危機と人類 上下 ジャレド・ダイアモンド著

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あの名著、”銃・病原菌・鉄”の著者ジャレド・ダイアモンド博士が書いたこの本、期待を持って開いた。
やはり期待通りで、平易な文章で広く俯瞰していながらポイントは絞って興味を引き付けてくれ、なかなか飽きさせないところが、ダイアモンドさんらしい。

この本は、国家が危機にあたってどう対処したかを、フィンランド、日本、チリ、インドネシア、ドイツ、オーストラリアの各国それぞれについて紹介し、検証している。そして、そこから得られるものを念頭に、現在の米国、日本、そして世界の問題点と将来の展望を述べている。

各国、いろいろな出来事が起こっていろいろな対処をしているのだが、そのひとつひとつが僕の好奇心を刺激する。
特に帝国主義各国の圧力の中で明治日本が行なった対処をダイアモンド博士は高く評価している。

その中で、特に僕が印象的だったのは明治政府が新しい伝統を作ったと博士が述べているところだ。それはそうだろう、将軍様の天下が300年以上も続いたのだから天皇陛下でさえ庶民には馴染みがあったとは思えないし、国旗も国家と言う概念もないのに天皇制のもと全国民を統一しないといけないのだから、さぞかし苦労もあったろうが、そこをうまくやったということだろう。

そう言えば、相撲だって江戸時代までは、ヤクザの親分が興行主だったこともある、ただのプロスポーツだったのを明治期に相撲界が自身で国技と呼んでそれなりの地位を得ていったというのを聞いた事がある。また、歌舞伎だって、ストリップまがいの事をやっていたのを風紀が乱れるといって男がやるようになったくらいの大衆芸能だった筈だが、うまく立ち回って今では梨園なんて週刊誌に載るようになった。
これみんな、明治以降に新しい伝統として作られてきたものだろう。
まあ、こんな事はこの本に書かれている事とは何の関係もないのだが・・・。

とにかく、博士はいろいろな国家の危機をこの本で紹介しているのだけれど、そこで僕が思ったのは、現在の日本。
安保法制、モリカケ、桜の会、黒川検事長、そして新型コロナ対策、それらにまつわる文書の改ざんや廃棄、保育園がすぐできないとわかったら幼保無償化にしましょうなんて人気取り、嘘でもなんでも政府が言い張ればそのまま押し通せる、お金は日銀に刷らせればいくらでも湧いて出て来ると言うような政策。

こんな事をしていたら、ちょっとのきっかけで国家危機なんてやってくるし、そのときになっても、国民は危機に気が付かないだろう。逆に日中戦争から太平洋戦争に進んで行ったときのようにマスコミや国民が後押しして、危機に突き進んで行くかもしれない。

読み終わった後、そんな事を考えていたら何か暗い気持ちになってきたし、日本人って受け身で対処するときは結構頑張れるんだけれど、自分達で将来の事を考えるとか能動的な事って余り得意じゃないのかもしれないなぁ、と思った。
とにかく、今がうまく行っていても数年ででんぐりかえって危機なることもあるよ、日本人気を付けろ。

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