この本は、僕にとってブレイディみかこさんの本としては三冊目である。ちょっと彼女の本ならお金を出してもいいかなと思うくらいには気に入っている。
今回は、いままでとはちょっと違って舞台は日本。その母国日本の底辺辺りを見てまわって、英国と比較してみようと言う趣向らしい。
と言うか、ブレイディみかこ流感性でぶった切ると言う事だろう。
みかこさんも、この本の”はじめに”で書いているが、日本人というものは、昔から見たい物しか見ないではなくて、見えないような所がある。
僕の周りでも、見ないと言う意思を持ったものではなくて、気が付かないと言ってもいいくらいの鈍感な人達がたくさんいる。
こういう人は、想像力の欠如とか思いやりのなさとか、いろいろな言い方も出来ると思うが、けっして頭がいいとか悪いとか、有名大卒とか中卒とか、大企業に勤務とか中小企業勤務とか、管理職とかヒラ社員だとか、頭脳の出来や社会的地位に関係なくそこら中にいる。
みかこさんは、”日本人は”と一括りにしているが、僕もそうかもしれないと思う。そう思うくらいにたくさんいる。
そんな日本人の見えない所を見て、ブライトン人みかこ流視点でぶった切ってもらいたいと思いながら読み始めた。
まあ読み進めて行くと、ぶった切ると言うより日本の底辺の現状をルポすると言ったほうが合っているかなと言う感じだが、そこここに英国との比較やみかこさんの感じた事が出て来る。
英国在住の人に日本の現状をレポートしてもらうと言うのも変な話だが、僕が知らない領域のお話がほとんどなので新鮮である。
ただ、保育園のくだりではウチの長男が生まれた時を思い出した。
愚妻が産休明けて職場に復帰するつもりで保育園を探したのだが、ほうぼう見学して周ったあげく、あんなところにこの子を預けられないと言って会社を辞めて専業主婦になったときの事だ。
そのときの無認可保育所のマンションの一室に赤ん坊が詰め込まれている様子を話してくれた彼女の口ぶりをまざまざと思い出した。
まあ、とにかく僕なんぞは底辺の人間だから、出て来るお話はさもありなんと思ってしまうことがほとんどなんだけれども、みかこさんの文章は簡潔で読みやすいので、さらりと気分よく読めてしまった。
また、硬い本を読み飽きたときは、みかこさんの他の本を物色しよう。