魚にも自分がわかる 幸田正典著

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「お隣さんじゃないし、あいつ誰だろう?」とか
「今朝、鏡を見たらあごに虫がついてたからすぐ取ったよ。」なんてお話、ニモの世界だけだと思ったら大間違い。まあ、本当に会話はしていないけれど実際の魚の世界では、それぞれの魚は相手の顔を認識しており鏡に映った自分の姿を自分だと認識しているらしい。
ホンマかいな?

ホンマなんです。
そのお話をある特定の魚種で実験して確かめた詳細がこの本だ。いやはやなんとも面白い。

まずは、縄張りを持つ魚が自分の縄張りに入って来た相手を攻撃する時に彼は相手のどこを見て攻撃対象かどうか判断しているのか? まあ、自分の嫁さんかそうでないかとかだけど。それが、顔を見て判断しているらしいんだよね。
ハハハッ。 おもしろい。

次に鏡を見せて、その鏡に映った姿が自分だと認識する事を実験で確認しているのだが、魚もその他の動物同様にいろんな動作をして、その動作通りに鏡に映った姿が動く事を確認して、その姿が自分だと認識するらしい。

極めつけは、鏡に映せば見えるが自身では見えない所に寄生虫に似せたマークを付けて鏡を見せるとその直後にそのマーク(寄生虫)をとろうとその部分を石に擦りつけるらしい。おまけにその後とれたかどうかもう一度鏡で確認するそうだ。

この本は、他の種類の魚の寄生虫を取ったりして掃除するホンソメワケベラと言う魚を主に取り上げて実験しているのだが、この魚は小さな魚を掃除している最中に大きな魚のお客さんが様子を見に来ると俄然張り切って掃除をするらしく、他のお客さんが見ていないときは雑にするらしい。

と言う事は、「次のお客さんが来た、お客さんに逃げられないようにいいところ見せよう。」
と思って張り切っているのではないか?
そうなるとホンソメワケベラは、そういう事を思う「心」を持っていると言う事、じゃないのか。
ホントにニモの世界である。

今年の初め頃に友人から大きな生きたイカを貰った。このイカを捌いたのだけれど、この時のイカの目が忘れられない。あのダイオウイカの目にそっくりで、なんというか深遠、老獪、達観、世の中のすべての事がわかっている仙人の目のようで、「おまえの心の中はお見通しさ、ハハハッ」と言われた気がしてビビったのを憶えている。
結局、目を背けて脳天に包丁をぶっ刺して刺身にして食ったけれど。

最近、脳の構造は人間も魚も脊椎動物はみんな一緒だと言う事が分かって来たらしい。
まあ、そうだろうなぁ、ここまで実験で確かめられたら今まで人間が考えて来た他の動物に関する諸々は、思い上がった人間の勝手な思い込み以外の何物でもないと言う事だよね。

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