憂国論 戦後日本の欺瞞を撃つ 白井聡 鈴木邦男著

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右翼と言えば、赤尾敏、岸、児玉、総会屋、街宣車、ヤクザ、僕が思い浮かべるのはそんなところかな。
だから、新右翼なんて言われても僕の知識では、学生運動の左翼の反対側に居た人達、だから、私学の体育会の学生で大学側の犬、深夜テレビの討論番組みたいなやつとかで見た事があるちょっとインテリ風な人達。
そんな新右翼の鈴木邦男と社会学者の白井聡の対談集がこの本だ。

最初は野村秋介と三島由紀夫の話から始まるのだが、ここらあたりまでは期待通りの右翼っぽい話題で、こちらの期待を裏切らない。
だが、第二章の”沖縄の土人発言”や”新左翼はナショナリストだった”から第四章の”幼児的な日本人”や”堂々たる売国”など読み進めて行くと、本当にこの鈴木邦男と言う人は右翼なのかと疑いたくなってくる。

いたって普通、僕とあんまり変わらないじゃないか!
どういう事なのか?
この人、昔新右翼で抜けた人なのか、それとも、僕の思っている事が新右翼に近いのか?
いやはや、拍子抜けしてしまった。

ただ、僕も以前から思っていたけれど、右翼も左翼もまともな人達の根っこの部分は、この日本と言う国の事を真剣に考えていると言う点で、あまり変わらないと思う。
だから、人との待ち合わせのついでに何回か聞いた、あの赤尾敏のお話も詳細は忘れたけれど、いい事も言っていたなぁと思いだした。

僕の父は今年94歳になるけれど、何十年も夫婦で自民党員だった。代議士の後援会の幹部でもあったし、僕が小さい頃には自宅が選挙事務所になった事もある。そんな両親は、小泉さんが首相のとき彼の言う事に怒って、自民党員を辞めてしまった。

いすゞ自動車が派遣社員を満期前に首切りした時も「役員や社員の給料を少しずつ減らしてでもちゃんとしてやらんといかん。こんな恥ずかしい事をようするのぉ。」と怒っていた。父の会社では、長年取引のあった会社を助けるために実際にそうした事があったらしい。

そんな父が、安部政権になってから「戦争だけはいかん、こんな事しとったら戦争するぞ。」と口癖のように言って国会中継を見ながら怒っている。こんな老人が心配している。
なのにこの国の新聞やテレビは、御用マスコミかと思うくらいのおざなりな報道だし、テレビ番組は日本国礼賛、自画自賛番組のオンパレード。

自分が体制側についていると言うだけで自尊心が満たされる気位ばかりが高い、その癖、欧米人は下から見上げアジア人には上から見下す、愚かな民族。
こんな事書いたら日本人として救いがないのは分かっているけれど、最近の日本の政治や周りの日本人を見ていると、そう思いたくなくても思えてくる。

今度、父にあったらじっくり話をしてみようと思う。
この前の父との会話が、「こんなことしとったら戦争するぞ。」「しかたないよ、国民がバカなんやから。」
これが、父と息子の最後の会話になったら本当に虚しいからね。

そんな事を思っただけでもこの本を読んだ価値があった。読み易くて普通の真っ当な本でした。

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