WORK 働き方全史 ジェイムス・スーズマン著

Pocket

僕は東洋経済オンラインの記事をメールで配信してもらっているのだけれど、ある日お勧め本が紹介されているメールが来た。なんとなく眺めていると”WORK 働き方全史”とある。副題には、「働き過ぎる種」ホモ・サピエンスの誕生とある。何か気になってしようがない。
ああ、全史とサピエンスね! サピエンス全史かぁとちょっとして気づいて笑ってしまった。
編集者、うまい!

編集者に乗せられた感じだけれど、これが乗せられてよかった。なかなか、おもしろい。
まずは、ストーリーがしっかりしている。次に、出だしから読者の意表を衝いて来る。それでいて、著者の主張が出しゃばらない。なんと言うか、乗せられているのが心地良くて好奇心をくすぐられる。
前にも書いたけれど、編集者の手腕だろうね。

立派な羽根を持つクジャクがより多くの交尾回数を得られるなんて事はない。狩猟採集民であるブッシュマンは慢性的な栄養失調ではない。それどころか、農民が干ばつで配給の食料に頼って生きている同じ時期、より過酷な環境にいるブッシュマンは普通に暮らしている。

メンダカハタオリと言う鳥は、メス鳥との新居となる精密に作った巣を何度も丁寧に壊して作り直す。別にたくさん作り直したほうがメス鳥のウケがいい訳でもないらしい。
そして、多分余剰エネルギーを消費するためにそのような必要でもない事を彼らがやっているように見えるらしい。
なんて、僕らが勝手に定説だと信じて来た事を見事にひっくり返してくれる。

ブッシュマンは週15時間しか働かないらしい、それで充分だから。そして、獲れた獲物を皆に分け与える。それも大きな獲物を獲った者は自慢したりしてはいけない。喝采を期待してもいけない。嘲笑の対象になるからだ。これは、原始共産主義社会とでも言ったらいいのか、驚きだ。
そして、余剰な食料を貯蔵しない。それだけ、豊かだから。

人類と言う種では、狩猟採集から飛躍的生産量を誇る農耕へと移り変わってから余剰食糧で賄える王様や役人や兵士が出現してきた。人口も飛躍的に増加した。
そして、欲や野心も人々の心に普通の事として生まれて来た。貨幣、利子、家畜、奴隷、だんだんと現代の社会へと話が進んで行く。東アジアの過重労働として日本の過労死の例が挙げられる。

僕もうすうす感づいていたけれど著者の言わんとするところに首までどっぷりと浸かって、働くって本来の意味は何だろうと考えている、そして、既成概念をぶち壊されて爽快な気分の自分がいた。
現代社会において働く意味なんて人それぞれだろうけれど、もう少し根源的なところから考えてみてもいいんじゃないだろうかと思わせてくれた本でした。

 

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。