女子高生の娘が図書館から借りて来た本、第二弾。
この本の題名には何の記憶もないが、著者名は聞いたことがあると思って本の奥付の著者略歴をみると文藝賞や大江健三郎賞、芥川賞まで受賞している。そうそう、背中を蹴るとかそういう題名の本だったね芥川賞は。
いやぁ、たいしたもんです。
ということで、なんとなく内容が想像できるかわいらしい表紙を開いたらいきなりどこかの教室での授業風景からこの小説は始まった。おお、この小説は女子高生が主人公なのか、ここは家庭科実習室かと一瞬思ってしまったが、実は食品サンプル作成講座を主人公が受講している場面である。映画のようで導入部としては、なかなかいい。
話は、三十歳代の独り暮らしのOLの日々の思いや葛藤を”A”と名付けられた本人の内なる声と主人公の会話で味付けながら進んで行く。
最近の若い作家の小説の軽やかなスタイルを踏襲しているこの小説だが、さらにこの”A”との会話によって話の輪郭がハッキリして小気味いい。
内なる声、誰もが持っているだろうけれどほとんど聞こえない人から声が大きすぎて何もできなくなる人までいろんな内なる声があるだろうが、それをセンス良くいい感じで登場させている。なかなかやるな、綿矢りさ。
そして、”A”との別れのときがやって来る。
コンパクトで軽やかで読みやすく、ストーリーも飽きさせない程度には良く出来た小説だなとは思ったけれど、222頁で1400円はちょっと高いかな。
図書館で借りたおまえに言われたくないと言われそうだが、でも、綿矢りさ、もう一冊読んでみたいなと思った。