他人をバカにしたがる男たち  河合 薫著

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先日、新しく始めた仕事のクルマで交差点を右折したときの出来事。
前から左ウィンカーを出して走ってきたクルマがあったので、そのクルマに続いて右折したところ、直後にそのクルマがハザードをだして停車した。いやぁ、参ったなと思いながら右車線に出てかわそうと思って、前方を見ると80m程先のカーブを曲がって一台のクルマが来た。

そのクルマとの間には、左車線に僕の直前とずっと先に2台と右車線に1台のクルマが駐車していた。走って来たそのクルマは、そのままS字を書くように駐車車両の間をすり抜け、右車線に半分はみ出している僕のクルマの2m先に停まりパッシングした。

ひと昔前ならシャコタンのあんちゃんがやりそうなことだが、そのクルマに乗っていたのは、たぶん70代くらいの夫婦。ふたりともすました顔をしている。

また、ある朝の7時半頃にある公共的な施設の前を通り過ぎようとしたところ正面玄関の前に70代とおぼしきジイさんが、落ち着かない様子で行ったり来たりしている。脇を通り過ぎようとしたとき目と目が合った。

ジイさんは、僕のことをその施設の職員かそれとも自分と同じ境遇の恵まれないジジイかのどちらかと思ったのか知らないが、僕に近寄って来て不平不満をぶちまけだした。
曰く、「8時半に受付って言うから来たのに、1時間前なのに未だ開いていない。遅れるとまずいと思って、俺はタクシーに乗って来たんだぞ。なんとか、かんとか・・・・」

何年か前からか老人が、役所や病院、学校などの公共施設や企業のコールセンタなどの決して反論してこないようなところでイチャモンつけたり暴言を吐いたりすることが話題になっていた。それは、最近になってもひどい状況だと見聞きする。
そんな訳で、この本の題名に興味を惹かれ読んでみた。

まずは、プロローグを読み始めてちょっと違和感を覚えた。それは、この本は企業社会を念頭に話を進めていくんだろうか、この本全体が企業社会の枠から出て来られないんじゃないか、という思いが僕の頭をよぎったからだ。

言い換えれば、現役サラリーマン向けのコラムを集めたような本の匂いがした。
もちろん、企業社会を軸にしてもいいとは思うけれど、最後には多方面からのアプローチもした結果、普遍的な問題としてとらえて、こういう結論に至りました。と言うスタイルを僕は期待していた。

まあ、こんな薄い本だし日経の本だし、読む前に気づくべきだとは思うが、最初の僕の直感は当たっていた。

まずは、企業社会で他人をバカにするジジイ達の生態や何故そのジジイが出て来るのかという話から女性をバカにするジジイ達の話、最後にそれらのジジババ達の未来と話は進んで行く。それらの話は、サラリーマン諸氏の共感を得るだろうし、うんうんそうだろうなぁと頷ける話もあっておもしろいとは思うのだけれど・・・・。

全般に渡って、SOC(Sense Of Coherence)=”首尾一貫感覚”と言う言葉やこのSOCを支える資源としてのリソースと言う言葉が使われているのだけれど、こういうキーワードにしては、最初の言葉の説明に丁寧さが欠けていて、ちょっと最初のうちは分かりづらい。

そして、そのSOCの秀でた人の話を著名人に求めて、その著名人がブラック企業の経営者と判明したら、それはフェイクSOCだと断じていたりしている。
なんかなぁ、いかにも短絡的だし脇が甘い感じがする。
それらの話も辻褄は合っているんだけどねぇ。

とかなんとか言っても、なかなか興味深い話も出て来る。
”ヒラ社員はトップよりも死亡率が高い”とか、
”採用時に自分が「〇」をつけた人を昇進させる”とか、
”自分以外は25万ドル自分は10万ドルの年収、自分以外は2.5万ドル自分は5万ドルの年収、どちらがいい?と言う調査で過半数が5万ドルを選択した”とか、
”自分の働いている会社を信頼している人は、28ヵ国中日本は最下位”とか。

こんなおもしろそうな調査を紹介したり、労働基準法などのエピソードもあるのだけれど、紙幅が限られているのか少し突っ込みが足らないし、もっと丁寧に書いてもいいと思う。

そして、量的制限で仕方なく書いているのならいいのだけれど、著者の頭の中が企業社会や企業文化から抜け出られなくて、この著書が精いっぱいなら残念としか言いようがない。
まあ、内容が題名負けしていると言うか、おおげさな題名をつけてしまっただけかもしれないけれど。

最近、テレビ等のコメンテータでも思慮浅く視野の狭い人が多いような気がしていたから、僕が厳しくなりすぎているのかもしれない。
ひょっとしたら僕自身、”他人をバカにしたがる男たち”のひとりかも?

まあ、この本、世のサラリーマンが通勤電車で見るにはいいかもしれない。

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