この前読んだ青木理の”時代の抵抗者たち”に、この著者中村文則が出ていたので、なんとなく以前から気になっていたけれど読んでいなかったこの本を読みたくなった。
この著者は知らなかったけれど、この本の題名だけは聞いたことがある程度には知っていた。
僕は、以前あまり日本の小説というものを読む気になれず、外国のエンタメ小説やエスピオナージなどばかりを読んでいたので、国内の小説というものはあまり知らないのだ。
僕の感覚では、一部の作家の作品は別にして多くの日本の小説は中途半端な感じがして内容も詰めが甘く、ツッコミどころも多い。
それに引き換え、外国の売れっ子作家の小説は、流石にプロットもしっかりしていて時間もお金もかけているなぁと感じさせるものがある。
やっぱり、二年に一冊程度書いて贅沢な生活が出来るほど稼げれば出来も違うわなと思わせるものがある。
さて、この小説。始まりはハードボイルドな雰囲気で始まる。なかなか雰囲気のある出だしだ。
その後も細かい描写で丁寧に書かれているのが好感が持てる。
僕は、この作家の事は何にも知らないのだけれど、だいぶ手慣れたベテラン作家らしくみえる。
まあ、本の内容はここで書いても仕方がないので書かないけれど、結局最後まで読んで、この小説は文学作品だったのかなと思った。まあ、エンタメじゃないわな。
と言うのも、最後に主人公が刺される時、普通の頭なら殺される危険は勘づいて当たり前なのだから防刃チョッキを身に着けるなり、相手が刺す気配を感じたなら掏摸なんだから、さっと手錠を取り出して相手の手首にかけて、この人込みを死体を引き摺って行くのか、などと言って欲しかったな。
そこら辺、文学作品だよな。
とにかく、ドロドロしたところもなく爆発的でもなく静かでこじんまりした日本的な小説だった。