先日、受験生の娘が「この本読む?」 と聞いてきたのでふと見るとこの”シリアからの叫び”だった。
えっ、おまえ受験生だろ本なんて読む暇あるのかと喉まで出かかったけれど、それを呑み込んで「おお、読んでみるか」と言って読み始めた。
冒頭から兵士による性的暴行や無差別の砲撃や市街戦の話が延々と続く。読み進んで行くと丹念に取材をしたことが窺われるリアリティのある文章なんだけれど、だからこそやるせない。
そして、たぶん沖縄やユーゴでもそうだったように一番悲惨なめにあうのは一般市民だと。
その土地にしがみついて生きていくしかない人達だと。
金や特権を持っている人間ではないということ。
何か、虚しい気分になってくるが、それがいつもの現実なのだ。
アフリカの病気の子供達のために募金しようが、シリア難民のために募金しようが、どこかで、テレビの向こうの知らない遠い国のかわいそうな人達に少しの金をくれてやって自己満足に浸っていた人間に、テレビの中ではなくこれは現実の世界の話なんだと再認識させてくれる。
読みながら少し気が滅入ってくるのだけれど、それだけに今までの自分の想像力の無さが情けなくなる。
当たり前じゃん戦争なんだもん、そう当たり前なんだよ戦争なんだから。
でも、その当たり前すら想像できなくなって、感じられなくなってしまった僕たち日本人ってなんなんだろう。
遠い海外の国の人達だけでなく、近くにいる国内の他人の痛みや苦しみに共感出来なくなった我々日本人、ちょっと危ないかもなぁ。
94歳になる僕の父が、国会中継を見ながら「戦争だけはいけん」「このままいったら戦争するぞ」と言っている、その姿にもっと耳を傾ける真摯な態度が僕たち日本人には必要ではないのか。
そんなことを思いながらこの本を読み終わった。
さて、高3の受験生の娘はこの本を読んでどう思ったのだろうか?