この本、副題に”「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人”とある。そのものズバリ。
ソ連の日本語放送とそれに携わった人々の記録である。
1942年開始の日本語放送、太平洋戦争中から冷戦時代のソ連、そしてロシアになった時代に異国の地で日本向けに対外宣伝に関わっていた日本人ってどんな人達なんだろう。
僕の好奇心がムクムクと起き上がるのを感じた。
そこにはいろいろな人達がいた。亡命した人達。終戦後捕虜となり抑留されて放送局にスカウトされた人達、その後は仕事として興味のあった異国の地に渡った人達、あの愛の逃避行の岡田嘉子さんもいた。
そこには、普通の人達の人生があったし、ただプロバガンダを棒読みするだけではなく、日本とロシアを繋ごうとする心があった。
この本を読んだ後、僕は少し豊かな気分になった。
それは、この本に人々の人生がちりばめられて、その人生のひとつひとつが僕の中に溜められて栄養になったからだと思う。
少しだけ、僕の心は大きくなったかも。