この国の危機管理 失敗の本質 柳田邦男著

Pocket

僕はだいぶ前から、明治、大正、昭和から太平洋戦争までの世の中の流れや雰囲気、マスコミの報道姿勢などが、ここ10年か15年の現在の日本に似ていたのではないかと思っていた。

普通は、現在が過去に似ていると表現するのだが、僕の感覚からするとよく知っている現在が主で過去を見たら似ていそうと思っただけなんだけれど。
そんな事はどうでもいいけど、そんな訳で興味と期待を持ってこの本を開いた。

序章は、欠陥遺伝子の源流と銘打ってミッドウェーの敗北を分析して、失敗の本質を考察している。
そうなんだよなぁ、僕もインパールやミッドウェーその他の太平洋戦争の戦記をなんでそうなったのかと言う好奇心に駆られて読んでいたけれど、上層部の杜撰な作戦、想定外の事態を想定しないリスク管理の甘さ、声が大きいと意見が通るとか、etc、etc。
軍事のプロフェッショナルとは思えないようないい加減な対応が行なわれていたと言うより、まじめに脇の甘い事をやっていたらしい。

この本は、簡単に言うと序章のミッドウェーから第一章のコロナ、第二章の東日本震災、第三章の福島原発、第四章の災害・事故、第五章の政治と展開して、この本の表紙にドキュメンタリー・ケーススタディとあるように、それぞれのケーススタディを紹介し問題点を洗い出している。
しかし、それを最初から最後まで貫いていて、結局、戦前から現在までの”この国の危機管理 失敗の本質”としてまとめられた章はない。

ここら辺、普遍的な日本人の特質のような共通点をまとめてくれたりするかななんて僕はちょっと期待していたので少し残念だけれど、まあ、最後まで読めばその中を貫いている共通したものはわかるので良しとするし、この本の中で著者自身が、項目主義は役に立たないとあるのでこのスタイルは妥当なんだろう。

ただ、この本を読みながらこれでもかと杜撰な計画や対応を並べられると日本人としてうんざりするし、やりきれなくなって嫌気がさして来る。
結局、政治家や役人や軍人が愚かだと言う事は日本人全体が愚かだと言う事になるけれど、空母赤城の飛行隊長淵田美津雄が「国民性の欠陥」と呼んだ”合理性を欠く。セクショナリズムで視野が狭い。因習から容易に抜けきれない。すぐ思い上がって相手を見下げる。”、この”欠陥遺伝子”を日本人は乗り越えられるのか?

いやぁ、ダメでしょう。
突然変異でスーパースターが現れたりしないかぎり、だって、こんな欠陥遺伝子のこと以前にテレビに出て来る知識人や国会議員とかを含めて日本人全体の教養のレベルが低すぎるように思うんだけれど、最近。

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。