鉤十字の夜 キャサリン・バーデキン著

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時は、西暦2600年代。
世界は、ドイツ帝国と日本帝国に二分されて、ドイツ帝国ではヒトラーを神と崇めるヒトラー教のもと騎士と呼ばれる支配階級とナチ党員と平民の封建制の国家となっていた。
そして、被支配下地域であるドイツ以外の国々の国民は、ドイツ国民以下の階級となっていた。そして、キリスト教徒は誰からも蔑まれる賤民となっていた。

そこでは、焚書がおこなわれ人類の歴史は誰も知らない闇となっていた。
また、女性はゲットーに収容され、子供を産むだけの家畜のような扱いを受けていた。

そんなドイツの騎士の許をイギリスの航空機整備士が訪れる。そして、その騎士の先祖が残した書物を託される。

そんな話なんだけれど、この本は1930年代に書かれている。
そのナチス前夜に書かれた本を読みながら妙に現代日本に繋がる物を感じて、僕は薄気味悪くなっていた。

自民党の独裁、権力の集中、御用マスコミ、御用学者、それを支える何も深く考えようとしない気位だけが高い国民。
”強権に「いいね!」を押す若者たち” を読んだからではない、最近感じていた薄ら寒い感覚。

”危機と人類”でジャレド・ダイアモンド博士が書いていたように、民主国家なんて国民がたいしたことないよなんて思っている間に、あっと言う間に崩れ去るような気がしてきた。

とくに、あの太平洋戦争前の大正から昭和初期の状況と現在の日本が似ているのではないかと言う思いがここ何年か頭から離れない。

この本、小説としてもなかなか面白い。
登場人物に語らせてじっくりと物語の中の主題が浮き上がってくる小説としては、僕は久しぶりに読んだ本なのである。
特にスノードロップを読んだ直後だったので、あのショートショートのようなプロットだけで読ませるような小説とは対照的で僕にとって新鮮だった。

それと他に気付いたことを少し。
それは、ふたつ書き言葉として変な単語があったのだけれど、ひとつは忘れた。
ひとつは、会話でもなんでもない部分で ”いまいち” という単語が出て来たのにはビックリした。多分、初めて見た。
”いまいち”も相当出世したと言う事か。それとも、こんなこと言うのは、僕が歳をとったと言うだけのことか。

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