この小説、どんなジャンルの小説に分類されるのだろう。エンタメ小説とかかな、出版社が本の帯につけそうなのは国際政治小説とか?
とにかく、この手の小説は久しぶりに読んだ。日本の小説なら大藪春彦以来かな、何十年ぶりだろう。
物語は、尖閣諸島に中国の国旗が掲げられると言う事件から始まる。その対処に海上自衛隊特殊部隊が出動し鮮やかに処理する。
そんな導入部の話から一転し、今度は北朝鮮に事件が起こり日本政府が関与していくという展開で話が進む。
なかなか、ストーリーも練られていて飽きさせずどんどん読みすすむ事ができる。
読み終わった後、良く出来たストーリーで面白かったなぁと思えた。
ただ、どんどん読みすすむ事ができたのは、底が浅いからとも言える。
すべてに深く踏み込まず良く練られたストーリーや特殊部隊というものの紹介を補完する登場人物達。
しかし、もっと風景や兵器や戦闘場面の詳細な描写や人物描写などに力を入れても良かったのではないか。主人公の心の葛藤も見えない、脇役たちの人間性も気持ちも伝わってこない。
そんなところが、小説の厚みを感じられない原因かなと思う。
ドラマじゃなくて、自衛隊のプロモーションビデオと言うのは言い過ぎか?
ここらあたりが、著者が元自衛隊員であり本職の小説家ではないと言う事か。ただ、最近の日本の若手小説家も似たようなものだけれど。
とにかく、最近の日本の小説は量が足らない。
この小説は254頁であるが、最低でも350頁出来れば400頁くらいの量が欲しい。
いいプロットだけに惜しいなと思う。