ヒトはなぜ「がん」になるのか キャット・アーニー著

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今回は、そんなに題名に惹かれたわけじゃないけれど、なんとなく直感で面白そうな予感がした。
外国人の著者だし、研究畑からの視点で書かれているならだいたい良く出来ているのは経験からわかっている。まあ、訳されて日本で出版されていると言う事は、厳選されているのは違いないだろうから当たり前なのかもしれない。
それにしても、日本の本にはそういう本は少ないように思うけれど、なぜだろう?
出版社のせいなのか? それとも、そういう著者が少ないのか?

癌になるのは何故だろう?
そりゃ、遺伝子異常でしょ。それも、飲酒とか喫煙とか添加物飲み込んだりして、いろんな化学物質に晒されたりするからでしょ。それに、紫外線にあたっただけでも癌になると言うし。たまには生まれつき遺伝子の異常とかもあるだろうし。
なんて、単純に僕は思っていた。

実際、この本を読んでみてだいたいそれは当たっている事がわかった。
なんだ、それじゃ文字がぎっしり詰まった300頁の本にそんな事しか書いてないの?
そう、そんな事しか書いてないと言うか、まあ、遺伝子異常は頻繁に起こっていて、何かの拍子にポンとガン化する細胞が出来ると言う事が書いてある。

まあ、おおざっぱでいいなら何故ガンができるかなんて、ネットで検索すればわかる事だし、こんな300頁の本にする事はない筈なんで、この本がそれだけで終わる筈はないのは、わかっていたけどね。

だから逆に、僕はそんな世間に知られたことでなく何を書いているのだろうと好奇心が湧いた。
だいたい、第一章が
”地球に生命が生まれたところから話は始まる”
だからね、ワクワクした。

いやぁ、面白かったね。そこら辺のヘボな推理小説よりよっぽど面白かった。ちなみにこの本、またまた図書館で借りたんだけれど、忙しくって読む暇がなく返却期日が迫っていてちょっと焦り気味で読んだけど、心配御無用、いっきに読み終わった。

話は、癌がいつからあるのかとかどんな生物がなるのかとか、前癌状態の遺伝子異常なんて健康な人でもいっぱい持っているとか、そんな話から始まって癌研究の話と治療の話が続く。

そして、今まで地球上の生物が進化してきたのと同様に、患者個人の身体と言う限られた空間の中だけれど癌も進化の法則に則って変異を繰り返し、環境に適合したガンがのさばっていく。
その結果、抗がん剤を投与すれば、その効果は一時的でその後は耐性のある癌細胞がいっきに拡大すると。

そこで、著者がこの本に込めた熱い思いが最後に出て来る。ああ、このためにこの本の今までがあったのだと読者は気づく。

今の癌治療のあり方を変えるべきでないかと。
モグラたたき状態の治療をしても延命効果は限られている。癌細胞は常に耐性をつけて戻ってくる。

著者は言う、
”癌のプレシジョン・メディシンと最大耐用量というパラダイムは、進行がんの患者を十分に長生きさせるという本来の目的を達成できなかった。”

”ひとつの特効薬でがんを治そうと考えるのは、ショットガンでハリケーンを止めようと考えるくらい無意味なことだと気づこう。”

そうなんだ。
妙に納得したのはいいけれど、今現在癌と戦っている人達にこの話はできないよなぁ。その人たちに選択肢はないのが現実だろうし、それどころじゃないよね。
こんな話、知ったかぶりして口走らないように気をつけよう。

とにかく、この本もそうなんだけれど、外国のこういう本は、内容が濃い。バックグラウンドが広くて深いので、知識欲でなく物語として読まないと楽しめない。そんなところが、著者の力量なんだろうけど、この本は特に訳がいい。訳者は医学系とかに強い人なのかもしれないけれど、それにしても下調べとかも含めて大変労力のいる仕事なんだろうなぁと想像してしまう。
どうもありがとう。

 

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