まだまだ続く僕の健康本シリーズ、と言う訳で先日読んだ”パンと牛乳は今すぐやめなさい!”と言う本に出ていたこの本を読んでみた。
チャイナ・プロジェクトというなんとなくカッコいい題名から、中国での大規模研究から導き出された新しい研究成果が本の多くの部分を占めているのかと勝手に想像していたら肩透かしをくらった。
確かに題名のプロジェクトの成果が随所に出て来るのだが、本の主要な流れはそれとは関係なく、キャンベル博士の動物性たんぱく質の摂取が病気を産んでいると言う主張が本筋だ。
まず、我々が当たり前だと思っている動物性たんぱく質への崇拝が神話であるという事から心臓病や糖尿病、癌や自己免疫疾患、骨粗しょう症まで食事習慣が原因だと丁寧に説明していく。
僕が驚いたのは、発癌性物質を与えられたネズミのうち動物性たんぱく質20%食のねずみは100%癌になり、5%食のネズミはすべて癌にならなかったというところ。
他に面白かったところは、癌検診で癌が早く見つかれば5年生存率は上昇するが、それは早く見つかったから5年以上生きる人が増えるだろうが、死亡率は変わらない可能性があるというくだり。そうだよ、癌が見つかってから死亡するまでの期間が長くなっただけで、寿命が延びたとは一概には言えない可能性があるよね。
そして、これらの経済活動にとって余り芳しくない情報が学会や政府機関においてどのように葬られていくのかということが、博士の実体験として語られている。このあたりは、さすが公的な役職を担ってこられた博士だけあってリアリティがある。
700ページを超える長い長い本だが、あるひとつの研究成果をまとめただけの本ではなく、比較的広くて深さもそこそこの論理を展開している、ある種、啓蒙書のような本なので読むのに苦労する事はない。
ただ、キャンベル博士の信奉者だと思われる訳者の説明が多すぎて、途中から宗教書のような感じがして読後感にはマイナスに働いた。
注記自体は、原書にはない日本の統計データなどを加えたり分かりやすい補足などもあり親切だと思う所もあるのだけれど、所々訳者の主張が匂ってきたりして、僕の好みからすれば、翻訳の注記は簡潔にして原書のありのままを読者に伝えて欲しかった。
だから、最初は研究者の本だという感じで読み始めたが、読み終わる頃には、なんとなくベジタリアンの教祖の本のような気がして来た。
まあ、キャンベル博士の肩書もあるからそこまでは思わなかったけれど、あまり声が大きいと引けてしまうのも事実だ。
まあ、書かれていることはなかなか面白かった。