「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活 鈴木猛夫著

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僕は、グルテンフリー生活を始めて7年くらいになる。
身体のあちこちの関節に痛みがでたり腸炎になったりして長い間苦しんだのだが、たまたま読んだ本からこれは腸内環境の不全による免疫異常ではないかと疑いグルテンフリー生活を始めてみたら、どうも当たったようで、それ以来関節痛や腸炎は、ほとんど出なくなった。もっとも、グルテンフリーと言っても、なるべくグルテンフリーと自分で言っているくらいで、まあ、一週間に1度くらいは、パンやパスタやピザなんかを食べていい事にはしている。

そんな僕は、小麦と言う言葉に妙に敏感で、この本の題名に反応してしまった。と言うのはちょっとはあるが、日本人の間にパン食が広まったのは、アメリカの戦略によるところが大きいなんて言われると、つい僕の好奇心が湧き上がって来たと言うのが本当のところだ。

当時、アメリカは共産主義封じ込め政策の為に資本主義陣営に軍備増強させたがっていた。そして、アメリカは第二次世界大戦後に余剰農産物の対策を練っていたが、1953年に朝鮮戦争が終了し、さらに53年、54年は世界の小麦は大豊作だったので余剰小麦の扱いに苦慮していた。そこで、各国に軍備増強と食料援助を抱き合わせたMSA協定の締結を強く働きかけた。そこで出来たのが日本の自衛隊であり、給食のパンと脱脂粉乳であった。

食料と自衛隊、僕は知らなかった。
ただ、将来その国の農業が発展しては、アメリカの農産物が売れなくなるので農業投資にこの資金を使ってはいけないとか、軍備増強とセットであったりとか、ドル建て決済であったりとか、このMSA協定は疲弊した戦禍を受けた国々では不評で、余り活用されなかったらしい。そこで、アメリカはPL480法案という次の手を打ってくる。

これは、支払いは長期低利借款で自国通貨の返済でよく、農産物を売った代金を復興資金に使ってよいし、貧困層への援助や学校給食の無償援助にも使える。
但し、アメリカもこの資金をいろいろなものに使える。例えば、アメリカの農産物の宣伝や市場開拓資金などだ。
そう、日本でもアメリカはこの資金を使って農産物市場を宣伝開拓していったらしい。すなわち、将来を見据えた小麦販売のためのパン食の推進活動、飼料を売るための乳製品の宣伝。その結果としての現在の日本のパン食や洋食文化の定着があると筆者は述べている。

ただ、以上述べてきたようなアメリカの小麦戦略については、本書の半分以下しか書かれていない。残りは、日本伝統の食生活がいかに優れているか、その土地で長年暮らしてきた人たちには、その土地の食事が一番合っている。現在、日本で多くなった成人病の数々は欧米食が広まったからだ。
だから、食事を見直そうといろいろな角度から述べられている。
そして、半分も読めば、この本の主題は、こちら側だというのがはっきりわかって来る。

アメリカの小麦戦略の話も、和食の優れていると言う話と言うか如何に欧米食が日本人に合っていないかと言う話もなかなか面白かった。だが、やっぱり自分が小学生のときに食べていた給食のパンや脱脂粉乳の出処がこれだったんだと思うといちいち当時の事を思い出したりして懐かしい気分になった。

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