日本の社会では、いつの間にか地球温暖化の原因のほとんどは人間のせいだと言うのが社会常識となってしまった。
かつて、アメリカの副大統領が一大キャンペーンを張って、それに日本のマスコミが乗っかった。
来る日も来る日も、氷河が海に崩れ落ちる映像やロシアのツンドラ地帯の住宅が傾いた映像を流した。
アメリカの副大統領や日本政府が言っているのだから確かな筈で、自分たちで確かめてみる必要はないとでも思ったのか、必要と言うよりそんな事にお金をかけるのはバカだと思ったのかは知らないが、日本の社会常識では地球温暖化のほとんどは人間の仕業だと言う事になっている。
僕は、テレビに出て来る人達のほとんどが疑いの目を持っていないのに驚いていた。
だってそうでしょう?
以前、近い将来ヒマラヤの雪はすべて融けて無くなるとか、マンハッタンは5年か10年後に水没するとか言っていた団体が言っていることを無条件に何故受け入れるのか?
そもそも、IPCCってイギリスの原発推進のための広報団体がルーツでしょ。
僕は信じられない思いだった。
そんなひねくれた事を考える天邪鬼な僕だから、昨今言われている日本の人口減少問題も根本のところで納得がいかないままモヤモヤしていた。
狭い国土なんだからひとりあたりの土地面積が広くなれば住み易くなるんじゃないかなとか、GDPは国全体の総生産量なんだから人口が減れば減少するのは当然だけど一人当たりのGDPって変な言い方だけど、それが増えればいいんじゃないかなとか思っていた。そして、そこのところをちゃんと知りたくてこの本を読んでみた。
結論から言えば、人口減少は不可避なのは明らかだがそれより吉川先生はイノベーションが大事であるとおっしゃる。
明治以来、過去150年間の経済成長と人口の増減を見るとほとんど関係ないとグラフで示してくれる。
話は、人口と言うものが歴史的にどう捉えられてきたかと言う話から現在の日本の人口減少やそれに伴う社会保障の問題。
社会的な公平性や人間にとって経済とはなんなのか、経済成長というものの意味するところはなんだと進んで行く。
人々は豊かになればたくさん子供を産むと思われていたのにそうではなかった。しかし、豊かになれば寿命は延びたとか、興味深い話もたくさんあって面白い。
マルサスやケインズの話、ジニ係数のところも面白かった。ただ、こうやって読み終わっても僕のモヤモヤ感は解消されなかった。
それは、ひとつひとつの話は面白いし、全体を通してそれらが関連しているのも全体の話の筋が通っているのも充分わかるのだが、多分、僕自身が消化しきれていないせいだと思う。
推理小説のように著者がグイグイ引っ張って行ってくれる本なら身を任せていればいいのだけれど、この類の本はある程度読者がしっかり組み立てて消化しながら読まないと、僕の場合バラバラのままつまみ食いになってしまう。
時間がなかったので、ちょっと急いで読んだのがいけなかったと思う。再度、ゆっくり読んでみたいと思う。